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ネスレ ヘルシーキッズ 楽しく学ぶデジタル栄養絵本「おわんくんの骨ってなぁに?」 もっと詳しく 骨の大図鑑 ネスレ ヘルシーキッズ 楽しく学ぶデジタル栄養絵本「おわんくんの骨ってなぁに?」 もっと詳しく 骨の大図鑑

はじめに

体の組織の名前を言ってみてください。
心臓、血管、脳(のう)や神経、肺(はい)、肝臓(かんぞう)、腎臓(じんぞう)、胃腸、皮膚(ひふ)、そして骨。
体の中心にある骨はとても大事な組織だとは思うけれど、かたいだけで、痛くなるわけでもない。
骨はいったいどういう役割をもった組織なのでしょう。
 どうしてカルシウムは大切なの? どうやったら骨は丈夫になるの? かたいのに骨はどうやって成長するの?
身近だけど意外と知らないことばかりの骨とカルシウム。
「なぜなに?!骨とカルシウム」では、みなさんの「もっと知りたい!」にお答えし、骨とカルシウムのことをわかりやすく解説します。丈夫な骨をつくる大切さとコツ、食べものや生活の知恵をたくさん学んで、健康な毎日の生活に役立ててください。

内容

1.骨の役割

骨は体重の約15〜18%を占め、全身には約200個の骨があります。
それらの骨は、私たちの(1)体を支える、(2)動けるようにする、(3)体の器官を保護する、などの役割を持っています。
骨は、強い衝撃にも耐えられるように丈夫で、なおかつ軽快な動きをするために、できるだけ軽くする必要があります。
「軽くて丈夫」を実現するために、骨の外側はみっちりと詰まったかたい構造「緻密質(ちみつしつ)」、内側は空洞(くうどう)か、外力骨梁(こつりょう)という細い繊維(せんい)状の骨「海綿質(かいめんしつ)」という構造で力学的に補強(ほきょう)しています。

また、骨は構造的な機能の他に、(4)血液を作る場の提供、(5)カルシウムなどミネラルの貯蔵庫、という重要な役割を持っています。
骨の中心部の空洞は骨髄腔(こつずいくう)といい、ここで血液の主要な成分である赤血球、白血球、血小板がつくられます。
また骨は、体中の細胞が必要とするカルシウムを貯蔵し、細胞に安定供給するのに役立っています。

図1:骨の内部構造

図1:骨の内部構造
構造の特徴をよく観察してください。

図2:緻密質を拡大したところ

図2:緻密質を拡大したところ
上部の輪状の模様は、骨を新しくする過程で、破骨細胞(はこつさいぼう)がトンネルを掘り、骨芽細胞(こつがさいぼう)が埋めていった跡。骨細胞は骨の中に取り残された骨芽細胞由来です。

2.骨の成長

体は、骨の成長とともに大きくなっていきます。
胎児(たいじ)の時の骨は、頭蓋骨(ずがいこつ)を除き、やわらかい軟骨(なんこつ)のみでできています。
成長するにしたがって、骨の中央に血管が侵入して、そこからカルシウムが運び込まれ、沈着(ちんちゃく)して骨になっていきます。

その後は骨の両端部(りょうたんぶ)にも血管が侵入し、中央と両端の境の軟骨のみが残され、その部分(成長板)が成長していきます。個人差はありますが、男性では17~18歳くらい、女性では15~16歳くらいには、すべての骨ができあがり、成長が止まります。
また骨は赤ちゃんのときには約350個ありますが、成長とともにくっつき合って、成人の骨の数は基本的に206個ほどになります。

図3:大人と子どもの全身骨格

図3:大人と子どもの全身骨格
大人と子どもの骨、同じ点、違いを観察してみましょう。

図4:骨の成長のようす

図4:骨の成長のようす
かたい骨がどうやって成長するのか考えてみましょう。

図5:小児の頭蓋骨

図5:小児の頭蓋骨
頭蓋骨は柔らかい脳を守っています。子どもの頭蓋骨のつなぎ目は軟骨でできています。大人になると骨だけになって、針一本通さないくらい隙間(すきま)なくつながります。


3.骨の一生

骨のカルシウム量を骨量といいます。骨量は成長と共に増えていき、20~40代半ばにかけて最大になります。その時の骨の量を「最大骨量(ピークボーンマス)」といい、それ以上に骨量は増えません。
その後、骨量は年をとるにつれて少しずつ自然に減少していきます。
骨量が一定量(デンジャラスゾーン、大人(20~44歳)の骨量平均値の70%)を下回ると、骨がスカスカになって、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。この状態が骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。

図6;骨の一生

図6:骨の一生
子どもの頃に骨量を増やしておくと、大人になって骨量が減少しても骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になりにくい(青色)。最大骨量が低いと若くして骨粗鬆症のリスクが高まる(ピンク)。
<写真提供:骨粗鬆症財団副理事長 井上哲郎先生>

残念ながら、人は誰でも長生きをすれば骨粗鬆症になってしまいます。
ですから、最大骨量を高くしたり、その後の骨量の減少をおだやかにさせることが大切です。そうして、デンジャラスゾーンに入る時期をできるだけ遅くすることが、骨の健康のための重要な目標になります。
そのためには子どもの時にしっかり運動をして、そしてバランスのとれた食事、特にカルシウムをたくさん摂って最大骨量をできるだけ増やすことが何よりも大事です。
また大人になってからも運動とカルシウム摂取をしっかり行うことで、骨量の減少を少なくすることができます。
骨は子どもから大人まで、一生涯(しょうがい)かけて、丈夫にする努力が必要なのです。

コラム1:女性と骨粗鬆症

骨粗鬆症の方は1300万人、とくに女性に多く、65歳以上の女性の約半数が骨粗鬆症であると言われています。
骨粗鬆症は転倒による骨折の危険を高め、寝たきりの原因にもなりかねません。
女性に骨粗鬆症が多いのは、体格が小さく骨への負荷が少ないので最大骨量が全体的に低くなること、また閉経期に骨の健康に重要な女性ホルモンの量が減り、骨量が急激に減ること、そして平均寿命が男性よりも長いことが主な原因です。
加えて、近年、若い女性の「痩せ」傾向が問題になっています。「痩せ」は骨粗鬆症のリスク因子になることが知られています。また無理なダイエットによりカルシウム摂取不足が生じる恐れもあります。

骨によい食品の代表はカルシウムが豊富な乳製品ですが、大豆も注目されています。大豆は、たんぱく質が豊富で、骨形成を助けるビタミンKが多いほか、女性ホルモンと似た作用を持つイソフラボンを含んでいます。

4.骨を新しくする

動画:骨は生きている(動画)
左の大きな細胞が破骨細胞。いくつかの細胞が集まってできる多核細胞です。右の小さな細胞が骨芽細胞です。

骨には、古い骨を溶(と)かす細胞と新しい骨をつくる細胞がいて、新陳代謝(しんちんたいしゃ)を繰り返しています。これを骨のリモデリングといい、成長期が終わってもこの代謝は一生続きます。骨を溶かす細胞を“破骨細胞”、カルシウムなどを使って骨をつくる細胞を“骨芽細胞”といいます。[ ※ 絵本の中では、わかりやすくするために“溶かす”を“壊す”と表現しています。]

骨を新しくするスタートは、まず破骨細胞が骨に降り立ち、酸と酵素(こうそ)でカルシウムやコラーゲンたんぱく質などを溶かすところから始まります。
ついで骨芽細胞が、コラーゲンとリン酸カルシウム(アパタイト)などで骨をつくっていきます。
この「溶かす量」と「つくる量」のバランスが取れていることで、骨は健康な状態が維持(いじ)されます。骨は日々新しく生まれ変わっているのです。

しかし、カルシウムの摂取量が減って、血液中のカルシウムが不足気味になると、カルシウムを血液中に戻すために、骨をつくる骨芽細胞の働きよりも、骨を溶かす破骨細胞の働きが勝るようになります。
そうした状態が続くと、骨量(骨のカルシウム量)が減り、骨はどんどんスカスカになって弱くなってしまいます。

5.カルシウムの役割

カルシウムは、その99%が骨や歯といったかたい組織を構成していますが、残りの1%が血液や筋肉、神経の中にあります。
骨がない生物はいますが、カルシウムなしで生きていける生物はいません。全身には約60兆個の細胞があるといわれていますが、カルシウムは、これらの細胞の活動をつかさどる必須の要素なのです。

生命は、太古の海で、海という外界と細胞の内側を膜で隔(へだ)てることによって誕生しました。わたしたちの体もそれに似ていて海に近い組成を持った血液に細胞が浮いているようなつくりをしています。
細胞は、ある種の刺激を受けるとカルシウムが細胞膜の小さな孔から細胞内に流入し、筋肉の収縮、脳や神経の情報伝達、血液凝固(ぎょうこ)などの様々な働きができるようになっています。骨は生命の維持のためのカルシウムの貯蔵庫としても働き、血液中のカルシウムの量を一定にするのを助けています。

図7:カルシウムの一日の流れ

図7:カルシウムの一日の流れ
骨はカルシウムの「銀行」、血液は「お財布」のような働きをしています。お財布には常に細胞が必要とするカルシウムを一定量(100mg/L)入れておく必要があります。「骨銀行」からは古いお金(カルシウム)を新しいものに変えるため、毎日毎日約300mgを引出し、同じ量を預けることを繰り返しています。
カルシウムは尿などに毎日出ていきます。腸からカルシウムの補充がない場合、「お財布」の中のお金を入れておくために、銀行から引き出す分を増やさなくてはなりません。毎日しっかりカルシウム(食事Ca)を摂らないと「骨銀行」の貯金(骨量)はどんどん減ってしまうのです。

6.カルシウムは足りていない

カルシウムなどのミネラルは、体で作り出すことができませんので、必ず食事から摂(と)る必要があります。
日本の食事はバランスがよく、栄養的にもたいへん優れていることが知られていますが、乳製品はなかなか摂りにくいようです。そのため、日本人は十分な量のカルシウムが摂れている人は多くなく、どの年齢、性別でもカルシウム摂取量平均は推奨値(すいしょうち)に達していません。

10-11歳の1日のカルシウム摂取推奨量は、男の子が約700mg、女の子が約750mgです。体は小さくても、成長のためにたくさんのカルシウムが必要なため、子どもにも大人と同じくらいカルシウムが必要なのです。
体重あたりにすると、子供は大人の2~3倍くらいたくさん取らなければならない計算になります。

図8:年齢別カルシウム推奨量

図8:年齢別カルシウム推奨量

図9:食材のカルシウム含有量(一食分)

図9:一食分の食材のカルシウム含有量(がんゆうりょう)

コラム2:カルシウム不足と健康

カルシウム摂取の長期的な不足は骨粗鬆症の原因となります。
一方で、カルシウム不足で「イライラする」、「キレる」子どもが増えた、といった話をよく耳にしますが、こちらは実は科学的根拠のない話だそうです。

体は恒常性(ホメオスタシス)が維持できるようにできています。
血中カルシウムの濃度は常に一定になるように厳密にコントロールされていて、濃度が下がると骨から溶かすなどの指令(ホルモン)が体中を巡り、すぐに濃度を戻します。
低カルシウム血症になった場合、神経や筋肉に影響があり、しびれや筋肉のけいれんなどの症状が出ることが知られています。

カルシウム以外で骨に多いリンやマグネシウムも細胞の代謝に重要なミネラルです。これらの血中濃度が下がっても、細胞への供給のために骨を溶かす指令が出る仕組みになっています。
この時カルシウムも一緒に溶け出してしまいますので、骨の健康のためには、これらのミネラルもカルシウムとバランスよく摂取することが大切だと言われています。

イラスト へろへろおわんくん

7.骨の応援団とバランス栄養

カルシウム以外の骨の健康に重要な栄養素を見ていきましょう。

図10:骨を形成する成分

図10:骨を形成する成分

【コラーゲン】骨の約70%はカルシウムを主成分とする無機物(ミネラル)で、残りのうち約20%はコラーゲンを主成分とする有機物でできています。建物に例えるとカルシウムはコンクリート、コラーゲンは鉄骨にあたります。丈夫な骨をつくるにはその両方が必要です。コラーゲンはたんぱく質で、食べ物のたんぱく質を分解したアミノ酸が原料になります。コラーゲンが熱で変化したものが、煮こごり(ゼラチン)です。コラーゲンの合成にはビタミンCや鉄の助けが必要です。

【ビタミンD】せっかく食べたカルシウムも体に吸収されなければ意味がありません。カルシウムの約3割が吸収されますが、そこで重要な働きをしているのがビタミンDです。カルシウムが胃や腸で吸収される際に、ビタミンDは、運び屋の役割をして血液中にカルシウムを取り込みやすくするよう働きます。ビタミンDが多く含まれるのはいわしやさばのような青魚やきのこです。ビタミンDは食事からとるだけでなく、紫外線を浴びることで皮膚でもつくることができます。

【ビタミンK】ビタミンKは骨芽細胞が骨を形成するのに重要なビタミンです。

【ミネラル】カルシウムの他にもマグネシウムやリン、銅、マンガン、亜鉛などのミネラルも健康な骨の維持に重要な役割を果たしています。

骨の健康は細胞の活動により支えられています。骨の材料になる栄養素の他、細胞の活動に必要な様々な栄養素が骨の健康維持に関わっています。
摂取不足になりやすいカルシウムに注意が必要ですが、バランスのよい食事を心がけることもとても大切です。

図11:カルシウム応援団

図11:カルシウム応援団
骨が健康でいるためには、カルシウムに働きかける応援団の助けが必要です。カルシウムの吸収や骨へのカルシウムの出し入れなどのために、ビタミンやホルモンなどが働いています。

コラム3:ビタミンDの発見と紫外線

ビタミンDはカルシウムの腸管からの吸収を促進するなど、骨の健康に重要なビタミン。背骨が曲がるなどの症状が出る「くる病」の原因究明の過程で発見されました。

ビタミンの中ではめずらしく、ビタミンDは体の中で作ることができます。
皮膚は太陽からの紫外線の力を借りて、コレステロールの仲間からビタミンDを合成します。一般に両手の甲くらいの面積に15分ほど、あるいは日陰で30分浴びる程度で十分量の合成ができ、それ以上浴びても合成量はあまり増えないようです。皮膚障害のもとともなる紫外線を無理やり多量に浴びる必要はありません。

青魚を食べる習慣があまりなく、緯度が高いために紫外線が少ないヨーロッパでは、ビタミンD不足が起こりやすいと言われています。イギリスでは、産業革命による大気汚染で太陽光線が遮られ、くる病が増えたこともありました。
ヨーロッパなどの国々ではビタミンD不足を解消するため、牛乳などに添加していることが多いそうです。

ビタミンDは免疫や筋肉の代謝にも重要です。最近、特に高齢者などでビタミンD不足が注目されています。
外遊びや外出で皮膚でのビタミン合成をし、基本はビタミンDは食べ物からしっかりと摂る、そんな習慣が大切といえます。

イラスト:太陽、きのこ、魚

8.運動をしよう!

骨量を高めたり、維持するのに最も大切なのが「運動」です。
骨には、細胞が活動に必要とするカルシウムは十分備わっています。骨にこれほどのカルシウムが必要なのは、重力に逆らって地上で動くための強度が骨に必要だからです。とくに二足歩行をするヒトは、足腰や背骨などをかなり強化している必要があります。
ところが骨という組織は、案外ちゃっかりもので、必要な量と見なした骨量分のカルシウムしか骨に沈着させないのです。
重力のない宇宙に行くと、骨量はしだいに落ちていくことが知られています。
無重力では骨に負荷がかからないので、骨はカルシウムを蓄える必要なしと判断し、骨を溶かす方にシフトさせてしまうのです。

程度の差はありますが、同じ現象は寝たきりや運動不足でも起こります。
自動車などがなかった昔、ヒトの移動手段は歩くことでしたので、現代よりも運動量はかなり多く、骨への負荷も高かったことが予想されます。人類の歴史の中で、最も運動量が減ってしまっているのが、現代なのです。
「運動」することは様々なよい点がありますが、高い骨量を維持するための知恵として「運動」は極めて重要です。

図12:カルシウム摂取、運動と骨密度

図12:カルシウム摂取、運動と骨密度
小学生4年生を対象に調査したところ、カルシウム摂取(せっしゅ)量が多く、運動時間が長いこどもは骨密度が高くなりました。運動習慣と適切な栄養摂取が、児童の健全な発育に寄与していることがわかります。

コラム4:どのくらい歩いたらいいの?

運動は、骨の話にとどまらず、健康の維持増進にたいへん重要です。
「歩くこと」は身近でとても大事な運動です。
この10年間で全ての年齢層で、1日あたり約1,000歩(10分程度)減少し、また子どもは30年間で歩数が半減しているというデータがあるそうです。

運動量としては以下のような推奨がされています。
・子ども:「1日15,000歩、毎日60分以上の運動を」(東京都)
・大人:「今より10分多く体を動かし、16~64歳は毎日60分、65歳以上は毎日40分の運動を」(厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」)

イラスト:運動しているおわんくん

おわりに

骨は、ただかたいだけの組織ではなく、ダイナミックに変化する、ヒトが生きていくうえで欠かせない生きた組織です。そして普段の生活の工夫が、まさに健康な骨を永く生かすことにつながります。

骨へんに豊と書いて「體(からだ)」と読みます。
子どもから大人まで、骨を豊かにして健康な人生を永くおくるためには、骨の働きをよく理解して、適切な栄養と運動を心がけた健康な生活習慣を身につけましょう。

おわんくんとホネホネさんイラスト