初心者向け
ミキサー食の
作り方と注意点・
3つのポイント

ミキサー食とは、高齢者など噛む力や飲み込む力が弱くなった方のためにミキサーを使って料理を食べやすくした食事のことです。ミキサーがあれば家庭でも簡単に作ることができますが、注意も必要です。今回はミキサー食の基本的な作り方と注意点、ポイントなどをわかりやすく紹介します。

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ミキサー食とは?
ペースト食、ムース食などとは違うの?

ミキサー食とは、噛む力や飲み込む力が弱くなった方のためにミキサーを使って食べやすくした食事のことです1)。口の中でバラバラにならないように配慮されており、スプーンですくって食べられるように調理したものをいいます1)2)。同じように食べやすくした食事のことを、ピューレ食、ペースト食などと呼ぶこともあります2)。ブレンダー食と呼ばれることもあります。
そのほか、ムース食、ソフト食など、飲み込む力が弱くなった方のための食事にはいくつかの種類があります。その方の噛む力や飲み込む力に合わせた性状の食事を用意することが大切です3)

ミキサー食とその他の食事の違い1)2)3)4)
ソフト食
やわらか食
ミキサー食
ペースト食、ピューレ食
ムース食
ゼリー食
特徴
  • 形があるが舌でつぶせる程度にやわらかい
  • 口の中でまとまりやすい
  • 離水が少ない
  • べたつかず、口の中でまとまりやすい
  • スプーンですくって食べられる。
  • 離水の少ないゼリー・プリン・ムース状
  • なめらかさが均質
  • 少量をすくってそのまま丸呑みできる
  • やわらかい
    粒を含む
  • 粒がなく、
    なめらかさが均質
食事の例 三分粥、五分粥、全粥
やわらかいハンバーグの煮込み、あんかけにした大根や瓜の煮物など
粒のある粥
パンがゆ、かき卵スープ、とろろ汁、バナナなど
ペースト状のおもゆ
くず湯、白身魚ペースト、野菜ピューレなど
おもゆゼリー
白身魚ゼリー寄せ、海老ムース、ほうれん草ゼリー、かぼちゃプリン、など
飲み込み
やすさの
レベル
(0が最も
飲み込みやすく
5は普通の食事)
3 2-2 2-1 1
そろえて
おきたいもの
調理器具:ミキサーまたはフードプロセッサー、すり鉢・すりこぎ、マッシャー、ゴムベラ、計量スプーン、計量カップ、デジタル計量計など
調理材料:とろみ剤、ゼラチン、ゲル化剤など
ソフト食
やわらか食
特徴
  • 形があるが舌でつぶせる程度にやわらかい
  • 口の中でまとまりやすい
  • 離水が少ない
食事の例 三分粥、五分粥、全粥
やわらかいハンバーグの煮込み、あんかけにした大根や瓜の煮物など
飲み込みやすさのレベル
(0が最も飲み込みやすく5は普通の食事)
3
そろえて
おきたいもの
調理器具:ミキサーまたはフードプロセッサー、すり鉢・すりこぎ、マッシャー、ゴムベラ、計量スプーン、計量カップ、デジタル計量計など
調理材料:とろみ剤、ゼラチン、ゲル化剤など
ミキサー食
ペースト食、ピューレ食
特徴
  • べたつかず、口の中でまとまりやすい
  • スプーンですくって食べられる。
  • やわらかい
    粒を含む
  • 粒がなく、
    なめらかさが均質
食事の例 粒のある粥
パンがゆ、かき卵スープ、とろろ汁、バナナなど
ペースト状のおもゆ
くず湯、白身魚ペースト、野菜ピューレなど
飲み込みやすさのレベル
(0が最も飲み込みやすく5は普通の食事)
2-2 2-1
そろえて
おきたいもの
調理器具:ミキサーまたはフードプロセッサー、すり鉢・すりこぎ、マッシャー、ゴムベラ、計量スプーン、計量カップ、デジタル計量計など
調理材料:とろみ剤、ゼラチン、ゲル化剤など
ムース食
ゼリー食
特徴
  • 離水の少ないゼリー・プリン・ムース状
  • なめらかさが均質
  • 少量をすくってそのまま丸呑みできる
食事の例 おもゆゼリー
白身魚ゼリー寄せ、海老ムース、ほうれん草ゼリー、かぼちゃプリン、など
飲み込みやすさのレベル
(0が最も飲み込みやすく5は普通の食事)
1
そろえて
おきたいもの
調理器具:ミキサーまたはフードプロセッサー、すり鉢・すりこぎ、マッシャー、ゴムベラ、計量スプーン、計量カップ、デジタル計量計など
調理材料:とろみ剤、ゼラチン、ゲル化剤など

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ミキサー食の作り方と注意点

ミキサー食の作り方の基本は、調理した食材に水分を加え、ミキサーにかけてとろとろにすることです。そのままでは食べにくい場合は、とろみ剤などを加えてとろみを調節します1)3)

基本的にはどんなものでもミキサーにかけられますが、食材によってはおいしくなくなったり、かえって飲み込みにくくなってしまうものもあるので注意が必要です。作るときには次のような点に注意しましょう1)3)

  • 複数の食材を一緒にミキサーにかけると見た目や味、においが悪くなることがあります。一種類ずつミキサーにかけてから盛り付けるとよいでしょう。
  • ご飯やパン、麺などデンプン主体のものはミキサーにかけると硬くなり、かえって飲み込みにくくなることがあります。かける前に十分に水分を吸わせるようにしましょう。
  • レタスなどの生野菜は、ミキサーにかけると時間とともにえぐみが出ておいしく食べられません。温野菜を中心に活用するとよいでしょう。

作り方1
「お肉」を使った
ミキサー食の作り方3)4)5)

噛む力や飲み込む力が弱くなっても、お肉の風味を味わいたい方も多いことと思います。
肉団子やハンバーグ、つくねなどひき肉を使った家族用のメニューに、水分を加えてミキサーやフードプロセッサーにかけ、ペースト状にするとよいでしょう。脂ののったロース肉などを選ぶと、口の中でとろけておいしく感じられます。
つくねにヤマイモを混ぜたり、ハンバーグに豆腐を混ぜたりするとやわらかくふんわりとします。よく混ぜて均一にし、中までしっかり火を通します。とろみのあるタレをからめると飲み込みやすくおいしく食べられます。

作り方2
「豆腐」を使った
ミキサー食の作り方3)5)

良質なたんぱく質が摂れ、食欲がないときにもさっぱりと食べやすい豆腐は、人気の食材です。ただ、つぶすだけでは意外に飲み込みにくいことがあるので、とろみをつけるのがコツです。
飲み込みやすさで選ぶならなめらかで食べやすい絹ごし豆腐がおすすめです。木綿豆腐はハンバーグに混ぜたりするとよいでしょう。

作り方3
とろみのつけ方1)2)

とろみは片栗粉や葛などでつけられますが、加熱が必要なため手間もかかり、とろみの状態が安定しにくいこともあります。簡単にとろみをつけることができ、調節もしやすい市販のとろみ剤を利用してもよいでしょう。
マヨネーズやドレッシング、ソースなどとろみのある市販の調味料であえるのも一つの方法です。
なお、とろみの適切な濃度は人によって異なるので、わからないときはかかりつけ医など医療機関に相談しましょう。

作り方4
ミキサー食のおやつや
デザートを作る方法3)5)

ミキサー食でもおいしいスイーツやデザートを楽しむことができます。くだものや乳製品、卵などを活用すれば、食事だけでは足りないカロリーや栄養素を補うことができます。

くだものを活用

ビタミンが豊富なくだものの果汁はゼリーやムースにしましょう。やわらかく熟したバナナはつぶすだけで食べられることもあります。桃など繊維が気になるくだものはコンポートにしてミキサーにかけます。

乳製品を活用

ヨーグルトはそのままでも食べやすく、朝食、おやつやデザートに広く使える食材です。
酸味が苦手な方ははちみつを加え、くだものや野菜とミキサーにかけてヨーグルトスムージーにするのもおすすめです。

パンと卵を活用

パサパサして食べにくいパンはフレンチトーストにすれば食べやすくなります。卵液をパンの中心までしっかりと浸し、じっくり焼き上げると、とろとろしたやわらかさに仕上がります。

3

ミキサー食をより良くする3つのポイント

ミキサー食をおいしく食べられて、栄養も効率よく摂取するためには、どんなポイントに気をつければよいのでしょうか。3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:水分量アップ3)4)

高齢者はのどの渇きを訴えにくく、水分不足になりやすい傾向があります。1日に必要な水分量とされる体重(㎏)×30(ml/kg)を目安に、こまめに水分補給することが大切です。サラサラとした水分はむせやすいので、スポーツドリンクなどにとろみをつけたり、ゼリー状にしたものを、食間のおやつや食後のデザートとして摂るとよいでしょう。

ポイント2:カロリーアップ1)6)

75歳以上のほとんど外出をされない高齢者の場合、1日に必要とするカロリーは男性で1,800kcal以上、女性で1,400kcal以上です6)。ミキサー食は水分を加えて調理するためかさが増し、摂れる栄養量が低下しがちです。バターやマヨネーズ、生クリームやクリームチーズなど高カロリーを摂れる脂質の多い食品や、市販の栄養補助食品を加えるなどの工夫をするとよいでしょう。

ポイント3:盛り付けで食欲アップ1)3)4)

食べるためには、最初に目の前のものを食べ物と認識する必要があります。「おいしそう、食べたいな」と感じてもらえるような彩りや盛り付けを工夫しましょう
かぼちゃやなす、きゅうりは、皮をむいてミキサーにかけたほうがきれいな色が出ます。人参やほうれん草などの野菜ペーストでフレンチのソースのように皿を彩るのも食卓が楽しくなるのではないでしょうか。
見た目のきれいなテリーヌやゼリー寄せ、ムースなどは、彩りの引き立つ器に豪華に盛り付けると気分も変わります。

4

よくある質問と悩み

ミキサー食をおいしく感じられません。
食べる人もおいしくないと思っているのでは?

ミキサー食は作るときに水分を加えるため薄味になりがちです。高齢になると味覚が低下して味を感じにくくもなっているので、薄味では食欲もわきにくいでしょう1)4)
加える水分を水や出汁にせず、例えば牛丼なら煮汁を、寿司なら寿司酢を、チャーハンならコンソメスープを加えるようにすると、味がはっきりします1)。市販のたれやソースなどで味に変化をつけてみるのもよいでしょう。ご本人にも味見をしてもらって、好みの味付けかどうか確認してみてはいかがでしょうか4)

ミキサー食を毎日作るのは大変です。
効率よく準備するコツは?

作る方の負担が重くならないよう、手間を省き時短するコツをいくつかご紹介します3)4)

  • 粥はまとめて作って冷凍保存しておくと便利です。
  • 肉や魚、野菜などもそれぞれやわらかく煮込み小分けして冷蔵庫に保存しておきましょう。食べるときに調味料で味を変えれば同じ素材でも飽きずに食べられます。
  • 冷凍食品や缶詰、レトルト食品、市販の総菜なども材料として利用しましょう。
  • 噛む力や飲み込む力が弱くなった方がそのまま食べられるように調整された市販品も出ています。上手に活用しましょう。

ミキサー食にすると痩せてしまうことはありませんか?

ミキサー食は水分を加えてかき混ぜるため、かさが増えてしまうので、食べる量が少ないと必要な栄養量が十分に摂れなくなることもあります。ご紹介したカロリーアップのポイントを参考に調理したり、1日3食にこだわらず間食を入れるようにするとよいでしょう4)
ご本人の好みや、噛む力、飲み込む力に合っていないため、食べられなくなっていることも考えられます。様子を見て対応するようにしましょう4)

ミキサー食を作るには、手間も時間もかかります。長続きの秘訣は頑張り過ぎないこと4)。飲み込みやすさや栄養価などを調整された市販品も上手に取り入れながら、豊かな食卓を囲んでいきましょう。