高齢者に必要な
1日の水分摂取量とは?
水分補給のコツと
注意点

高齢者に必要な1日の水分量はおよそ2,500ml。水分は食事からも摂れるため、飲む量としては約1,000~1,500ml(コップ約7杯分)が目安です。ここでは、水分摂取量の目安と一緒に、水分補給時のコツや注意点もご紹介します。

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高齢者が1日に
必要な水分量約2,500ml

人間の体内は、体重の約60%を水分が占めています。からだの機能を維持するためには、1日を通して、取り込む水分量(摂取量)と失われる水分量(排出量)のバランスがとることが大切です1)
体重70kgの人の場合、特に運動などしていなくても呼吸や汗で自然に約900mlの水分が失われ、尿や便で約1,600mlの水分が排出されますので、バランスをとるためには約2,500mlの水分を取り込む必要があります1)2)
体内で代謝によって生まれる水分もありますが、もちろんそれだけでは足りないので食事や飲み物から補います。食事や飲み物から摂る1日に必要な水分摂取量は、体重1kgあたり30mlと、体重によって異なるため、
[ 最低限必要な水分量 = 30ml × 体重kg ]を目安にするとよいでしょう3)。また、運動をしたときや、熱くて汗をよくかく時期などは、発汗量に見合う水分・塩分の補給が必要です1)2)

1日に失われる水分2,500mL

[体重70kg]
呼吸や汗から
–900mL
尿や便で
–1,600mL

食事での水分摂取量は
約1,000mlを目安

体重が70kgの人の場合、食事から摂る必要がある水分量としては約1,000mlが目安になります2)。水分をあまり摂りたがらない高齢者には、味噌汁やスープを食事に出したり、おやつやデザートで水分を補ったりするのがおすすめです3)4)

水分量が多い食事の例1)4)
果物 スイカ、イチゴ、ミカン、リンゴ、桃、キウイフルーツなど
おやつ
デザート
ゼリー(果汁ゼリー、お茶ゼリー、アイソトニックゼリーなど)、プリン、ヨーグルト、ムース、果物のコンポート、水ようかん、乳酸飲料、牛乳、甘酒など
野菜 トマト、きゅうりなど
食事 スープ、味噌汁など(薄味)、豆腐、卵豆腐など

飲み物での水分摂取量は
約1,200mlを目安

体重が70㎏の人の場合、飲み物から摂取するとよい1日の水分量は約1,200mlであり2)、500ml前後のペットボトルなら約3本、コップなら約7杯が目安です。起床時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、就寝前の合計7回にコップ1杯(約200ml)の水分を補給することを習慣にするとよいでしょう1)。ただし、服薬の際に飲む水や、栄養補助飲料などによっても水分は摂れるため、必ずしも「コップ1杯を7回」にこだわる必要はありません。

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高齢者向けの
水分補給のコツ注意点

高齢者が水分を積極的に摂らない理由はさまざまですが、ちょっとした促しや働きかけで改善できることがあります。ポイントは「こまめに飲んでもらえる環境づくり」です1)

《 水分補給のコツ 》
おなかが冷えるといやがる場合は、夏でも温かい飲み物、または常温の飲み物を用意しておく。
味噌汁、スープなど汁物を薄味にして飲むようにすすめる。
ティータイムの時間をつくって一緒にお茶を楽しむ。
外出前後にコップ1杯の水分を飲んでもらう。
おやつやデザートに、果物やゼリーなど水分の多いもの食べてもらうようにする。

<注意点>
高齢者は嚥下機能が低下していることもあり、誤嚥のリスクがあります5)。飲み込みづらい方には、ゼリータイプの飲料などがおすすめです。
>高齢者の水分補給が簡単にできるコツとは?

水分摂りすぎてもいい?

からだの機能を維持するために必要な体内の水分(体液)は、水と塩分(ナトリウムやカリウムなどの電解質)からできていて、海水のような組成です1)。そのため、汗をかいたときには、水分だけではなく一緒に電解質(塩分)も一緒に失われているのです5)6)。大量の汗をかいたあとの水分補給として、水やお茶などの塩分の少ない飲料を大量に飲むと、体液が薄まってしまい、水分を摂っているのに脱水症状になることがあります6)。からだの水分不足(脱水)の対策のためには、水分だけでなく電解質(塩分)の補給も必要です1)

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水分摂取量が
減ると出てくるリスク

高齢者の体液量は、成人が体重の60%を占めるのに対して50%と少なく、水分を保持する能力が低下しています1)。また、のどのかわきを感じにくくなっていたり、トイレの回数を気にして自分からはこまめな水分補給を怠りがちです4)。食事量も少なくなるので水分不足になりやすいことに加え、高齢者は重い脱水症状や熱中症を起こしやすいので十分注意が必要です1)

熱中症
高温多湿な環境で体内の水分と塩分のバランスが崩れたり、体温を調節する機能がうまく働かなかったりし、体内に熱がたまって熱中症が起こります。特に高齢者は、安静にしていても起こることがあります1)
脱水症状
脱水とは体内の水分や塩分が失われ、体液量が減少した状態です。からだに取り込む水分量・からだから失われる水分量のバランスが崩れることで脱水症状が起こります。

高齢者ならではの特徴を踏まえながら、水分不足にならない生活を心がけましょう。