慢性便秘症診療ガイドラインについて

2019.4.12

便秘治療の明確な指針となる「診療ガイドライン」

便秘を病気だとは考えず、「たかが便秘でわざわざ病院に行くなんて」と思う人もいることでしょう。実際に、便秘の症状に悩む人の多くは、薬局で便秘薬を購入するなどのセルフケアで便秘の解消を図っているといわれています1)。それは、これまで便秘の診断や治療に関して便秘でお悩みの方と医療者の意思決定を助ける「診療ガイドライン*」が存在しなかったことも一因とされています1)

しかし、便秘に悩む人の数は高齢になるほど増え、70代以降では男女ともに大きく増加します1)2)。社会の高齢化が進む中、便秘やその合併症への対応がより大切と考えられるようになりました1)。このような背景により、2017年に国内で初めて、便秘治療において明確な指針となる「慢性便秘症診療ガイドライン」が、日本消化器病学会の関連研究会である慢性便秘の診断・治療研究会から発行されました。

便秘を「つらい」と思ったら病院で相談を

慢性便秘症診療ガイドラインには、便秘の定義、有病率やリスク要因などの疫学、便秘がなぜ起こるのかという原因やメカニズム、便秘の診断や検査の方法、推奨される治療法などが記載されています1)。特に治療法については、生活習慣の改善や便秘に対して用いられるさまざまな治療薬などについて、「その治療はどの程度有効か」「科学的根拠はどの程度あるか」などが示されており1)、医療機関で便秘の診断や治療を行う際の指針となっています。

つらい便秘を早く解消するためにも、症状が長く続く場合や、市販の便秘薬を飲んでも改善しない場合などは、「たかが便秘」と我慢することなく、早めに医療機関を受診して相談しましょう。

*診療ガイドラインの定義:診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、便秘でお悩みの方と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書3)

グアー豆

  1. 慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂.(2017)
  2. 平成28年国民生活基礎調査(厚生労働省)
  3. 福井次矢ほか、Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.(2014)